そんなある日のことだった。
「そんなに外を見て、いつも何を見てるんだ?」
障子窓の外から声がした。
そちらの方を見ると、原田左之助が外壁に寄りかかって話しかけてきた。
私を見るでもなく、私の見ていた方向をじっと見ていた。
どうやら現時点の監視役らしい。
「お前の見ている方向はいつも同じだ。
でも俺には分からねぇ。
お前の見ている方を見てもこれっぽっちも分からなかった」
随分真面目な横顔の彼は、尚も私がいつも向いている方向を向いたままだった。
「……」
何も答えずにしばらく彼を見ていた。
彼は私の視線にも気づかずに、ずっと同じ方向を見ている。
すると、私の視線に気づいて眉を下げて笑った。
「今はお前と同じ方を見ていると思ってたが、お前俺を見てたのか」

