だからなのかもしれない。
少し踏み込んだところまで聞いてしまった。
「なんであんたはいじめられてるの?」
そこまでの興味は無かった。
女性はあからさまに戸惑い、口をつぐんだ。
「言いたくないなら言わなくていい」
女性から月へと視線を移す。
この人は敵では無いらしいので、放っておいても大丈夫だろう。
私がそう判断したのが分かったのか、ノアはまた私の膝の上に収まった。
「……、優しいのですね」
クスリと笑った彼女はどこか安堵しているようだった。
「元は遊郭街に住んでいたのですが、遊女にはなれなかったのです。
ですから、周りの方によく思われないのです」
悲しげな瞳はどこか懐かしく思えた。
気のせいだろうか。
佐之と一緒にいた時よりも前に、どこかで会ったことがあるような気がする。

