小1時間ほど経ったが、頭の中はたった一つの事が忘れられないままだった。
筆を置いて、溜め息をつく。
「ここ1時間で何回溜め息つく気です?」
面白そうに笑う総司が立っていたことにも気づかなかった。
総司はいつもように勝手に部屋に入って来た。
貼り付けたような笑顔に、怒りが見えた。
「誰のことを考えてたんですか?」
向けられた笑顔はやはり冷たいものだった。
俺は何も言わずに黙っていた。
「雨ちゃんですよね?」
ピシャリと当てられて、肩をピクリと動かしてしまった。
総司がそれを見落とすわけが無かった。

