「あいつらには笑いかけるが、相変わらず私には笑ってはくれないのか」



クスクスと笑う久しぶりの彼はどこか嬉しそうだった。



「……あの時、私の頭の中に話しかけたのはあんただよね」



琥珀色の彼はキョトンとした表情を見せたけど、理解したかのように「あぁ」と手を叩いた。




「そうだ。

あの状態はお前にとってはいい状態ではなかったからな」



ヨシヨシと頭を撫でて宥めてくる。


あの時、呼吸が荒くなっていい状態ではなかったのは本当のこと。


この人のおかげで落ち着いたのも本当のこと。


でも、腑に落ちないことがある。




「……なんで、私はあんたの声に落ち着いたの?」


左之がいてくれたということもあったんだろうけど、それだけじゃなかった。


直接体を弄られたように急に軽くなった。