「あ、あんた……腕が……」
「大丈夫だけど、これに懲りたらちゃんと前を見て歩きなね」
男は私の手を取って起き上がると、何度も感謝の言葉と謝罪の言葉をして去って行った。
「あの外套の兄ちゃん凄ぇ」
「腕は大丈夫かしら?」
そんな言葉がよく聞こえたけど、やっぱり傍観者しかいなかった。
私はフードを深く被ってその場を去った。
比較的浅かったのはお父さんが私に気を遣ったのだろう。
でもきっと、傷をつけたことは心に病んでいるんだろう。
あんなに面倒見のいい人のことだ。
悪いことをした気分になる。
「……結局私は…」
今回のことを見たとしても、悪い人には思えない。
じゃなきゃ、梅姉さんも彼について行ってはないだろう。
総司が言った言葉の意味がようやく分かった気がした。

