「何かあった?」
彼は私の顔を見て、呆れたように笑った。
「土方さんの小姓なのに何も知らないんだね」
総司は笑いを止めて、自分の足を上に上げてつま先を見ていた。
「君はさ、芹沢さんと仲がいいね」
総司の足の先に蝶が止まる。
それを嬉しそうに見ている。
でも総司が足を下ろした瞬間、ヒラヒラとまた飛んでいった。
今度はつまらなさそうな顔になった。
「…あの人に少しでも情があるのなら、もう近づかないのが君の為ってことだよ」
少しの怒りと、たくさんの悲しみが私に殺気となって刺さった……気がした。
それ以上は話すことなく行ってしまった。
私もそれ以上は聞けなかった。
……聞かなかった。