三人の前に現れたのは木製の大きな扉だった。
『全くもう。ミカちゃんを引き止めてくれないなんて、意地悪じゃないか―』
私とマリはカネコの話しかける方を向いた。
9、10歳だろうか―白いスーツを纏う少年が泣きそうな顔をして立っていた。胸元にはピンクのバラが差してある。
『だってぇ、その方が面白いと思ったんだもんっ…ダメだったぁ? お仕置き? ボク、お仕置きされるの?』
つぶらな瞳からポロポロと涙が出てくる。
「カネコ、男の子泣かすなんて最低…」
「お兄さん死んで報いた方がいいんじゃ…」
『僕悪者扱い!? そもそもサスターナお前最近能力使い過ぎなんだよ』
サスターナという名前には聞き覚えがあった。
〝『彼に癒しを…サスターナ』〟
男性を蘇生させた時の癒しの魔法だ。
『だってぇ、最近弟達がボロボロになって帰ってくるからぁ…ダメだったぁ? ボク、お仕置き確定?』
「お兄さん、その子って…」
『あーはいはい。お仕置きは見逃してやりますよ。そうそう、彼は獣族の神…獣神サスターナだよ』
獣神―その名前に比べたらとても可愛い顔立ちをしている。
カネコもそうだけど、神様って名の割には若すぎない?神様って千人様みたいなおじいさん想像するよね。
『カネコくんだってぇ…僕の能力使ってばっかりじゃんっ!』
『あー、聞こえないなー。はい。行こ行こ』
グイグイと扉の向こうに押してくるカネコ。
カネコってサスターナ君の能力を酷使してんのかよ!! と内心ツッコミ。
扉の向こうに足を踏み入れた瞬間、嗅いだことの無い匂いがした―
*****************
「ここが、特殊ジャペン~? なんか…」
「うん…ね…」
アヤと私はぐるりと周りを見渡す。
「「普通じゃね」」
見渡す限りのビル、ビル、ビル。たくさんの人が行き交っている。
ビュッと目の前にチラシが飛んできた。
「はーあーい、お姉さん! 良かったらそこのカフェいかがですかー?」
チラシに印刷されている女の人のイラストが喋る。
「あっ、はい」
―ただ違うのは、能力があちこちで使われているという事だ。
「いやー、すっごいね…普遍ジャペンがクズに感じるよ」
アヤがその言葉を発した途端、行き交う人々が困惑の目を向けているのに気付いた。
「ね、ねぇカネコ…」
『二人とも、こっちこっち♪』
振り向いたら、カネコはビルとビルの間の路地裏で手招きをしていた。
「え、何?」
『アヤちゃん、普遍ジャペンのこと話して感じたことない?』
「あ…うん、なんか軽蔑というか。嫌な感じはしたけど」
『ぶっちゃけて言うと、特殊住民は普遍ジャペンに対して差別意識持ってるんだあ~』
ニヘッと笑うカネコ。
「そ、そんなの授業でやってないよ」
『まあ、普遍住民は知る必要ないしね。能力のレベルは普遍ジャペンでいう人間性、勉学みたいなもん。 努力すればするほど能力は上がるし。生まれつき能力の使えない無能―意味はそのまま、普遍住民なんて丁寧な言い方はしない。〝無能〟…そう呼んでいるよ』
衝撃的だった。同じジャペンだと思っていた。こんなに差別意識を持たれるとは。
無能。その言葉だけが二人に重く深く響いた。
『全くもう。ミカちゃんを引き止めてくれないなんて、意地悪じゃないか―』
私とマリはカネコの話しかける方を向いた。
9、10歳だろうか―白いスーツを纏う少年が泣きそうな顔をして立っていた。胸元にはピンクのバラが差してある。
『だってぇ、その方が面白いと思ったんだもんっ…ダメだったぁ? お仕置き? ボク、お仕置きされるの?』
つぶらな瞳からポロポロと涙が出てくる。
「カネコ、男の子泣かすなんて最低…」
「お兄さん死んで報いた方がいいんじゃ…」
『僕悪者扱い!? そもそもサスターナお前最近能力使い過ぎなんだよ』
サスターナという名前には聞き覚えがあった。
〝『彼に癒しを…サスターナ』〟
男性を蘇生させた時の癒しの魔法だ。
『だってぇ、最近弟達がボロボロになって帰ってくるからぁ…ダメだったぁ? ボク、お仕置き確定?』
「お兄さん、その子って…」
『あーはいはい。お仕置きは見逃してやりますよ。そうそう、彼は獣族の神…獣神サスターナだよ』
獣神―その名前に比べたらとても可愛い顔立ちをしている。
カネコもそうだけど、神様って名の割には若すぎない?神様って千人様みたいなおじいさん想像するよね。
『カネコくんだってぇ…僕の能力使ってばっかりじゃんっ!』
『あー、聞こえないなー。はい。行こ行こ』
グイグイと扉の向こうに押してくるカネコ。
カネコってサスターナ君の能力を酷使してんのかよ!! と内心ツッコミ。
扉の向こうに足を踏み入れた瞬間、嗅いだことの無い匂いがした―
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「ここが、特殊ジャペン~? なんか…」
「うん…ね…」
アヤと私はぐるりと周りを見渡す。
「「普通じゃね」」
見渡す限りのビル、ビル、ビル。たくさんの人が行き交っている。
ビュッと目の前にチラシが飛んできた。
「はーあーい、お姉さん! 良かったらそこのカフェいかがですかー?」
チラシに印刷されている女の人のイラストが喋る。
「あっ、はい」
―ただ違うのは、能力があちこちで使われているという事だ。
「いやー、すっごいね…普遍ジャペンがクズに感じるよ」
アヤがその言葉を発した途端、行き交う人々が困惑の目を向けているのに気付いた。
「ね、ねぇカネコ…」
『二人とも、こっちこっち♪』
振り向いたら、カネコはビルとビルの間の路地裏で手招きをしていた。
「え、何?」
『アヤちゃん、普遍ジャペンのこと話して感じたことない?』
「あ…うん、なんか軽蔑というか。嫌な感じはしたけど」
『ぶっちゃけて言うと、特殊住民は普遍ジャペンに対して差別意識持ってるんだあ~』
ニヘッと笑うカネコ。
「そ、そんなの授業でやってないよ」
『まあ、普遍住民は知る必要ないしね。能力のレベルは普遍ジャペンでいう人間性、勉学みたいなもん。 努力すればするほど能力は上がるし。生まれつき能力の使えない無能―意味はそのまま、普遍住民なんて丁寧な言い方はしない。〝無能〟…そう呼んでいるよ』
衝撃的だった。同じジャペンだと思っていた。こんなに差別意識を持たれるとは。
無能。その言葉だけが二人に重く深く響いた。