『あれー? 今更気付いた感じかな?』
青年はビンをコンコンと指で叩く。
そのとき。
バシッ!
何かがぶつかるような音が響いた。
ミカが青年に殴りかかったのだ。
あの青年、何者…?
ミカの右ストレートを人差し指で止めていたのだ。
「てめ…ぇがっ…サクラ…を…」
ギリギリと拳を押すミカ。青年は全く動じない。余裕そうだ。
ミカ、サクラと一番仲良かったし、相当辛いはず…。なのにどうして正面から立ち向かえるの。ミカは、強いよ…。
『サクラって今朝の子かな? その子のことならそうだよ! いつも切り取った右手は、ホルマリン漬けにしてるんだよ♪』
“いつも”…?
必死なミカとは裏腹に青年は上機嫌だ。
『そーれ♪』
トンッ。青年は人差し指でミカの拳を押す。
バシュン!
ミカは吹き飛び、校舎の壁にぶつかった。身体はめり込み、パラパラとコンクリートの破片が落ちる。
「ミカちゃん!! 」
アヤはミカに駆け寄る。呻いているから、命に別状はないだろう。しかし、全身から流血している。
「ミカに何したの!!」
青年をキッと睨みつけ、私は言った。
こいつ、やばいー
そう直感で感じた。
『何したって、見たまんま吹き飛ばしたんだけど…。ーまあ最も、この能力は彼女のものだよ? 』
は? どういうこと?
私の怪訝な顔を見て青年はため息をついた。
『だから、サクラちゃん? だっけ。あの子も“こっち側”の人間ってことだよ。でも魔族では無いよ! てか魔族の右手取ってどうするん。あっはっはっはっはっ!』
青年は一人でツボっている。
え、待って。サクラが特殊住民だったって本当なの…? でも、私らと普通に過ごしてたし。
『まぁ、彼女は能力を最低限に抑えてたからなあ~。イマイチ…。君たち特殊ジャペンの事、全然知らないみたいだし』
青年は横目でミカに肩を貸すアヤを見た。
『あの子は何らか知ってそうだけど。ふふっ、普遍住民は本当に脆いなあ』
アヤが…? そんなハズない。
『これ、綺麗でしょ』
ポイッとキラキラしたものを投げてきた。私は慌ててキャッチすると手の中の煌めきに目を細めた。
「何これ…宝石?」
まるでエメラルドのような綺麗な結晶が手の中で輝いている。
『〝命晶〟って言うんだ。特殊住民は生まれつき持っている能力を発動させるための魔力がある。命晶はその魔力の結晶さ。そして魔力は心臓と連結している』
命晶―メイショウ。魔力―。私はまるでおとぎ話を聞いている気分になった。
青年は続ける。
『連結しているのは、心臓だけでは無い。―右手も』
手に持つビンの中の右手は木の葉のように水中をゆらりと漂っている。
「―じゃあ、右手を取ったら」
『死ぬね。特殊住民は死んだ時、魔力が結晶化してうなじに命晶が出来る』
青年がサクラの右手を取ったのはサクラの命晶を奪う為、か―。辻褄が合った。そんなことの為に殺されたサクラの事を思うと胸が締め付けられる。
それにうなじにこんな綺麗な結晶ができるのか?全く想像出来ないんだけど。
ミカ達に目をやると、ピロティのベンチでアヤが傷の手当をしている。
アヤと目が合った。「気を付けて」と口パクしてきた。コクリと頷いて話を聞く。
『そして、この命晶を飲み込むとどうなると思う?』
「さあ…」
『その人の能力が使えるようになるんだ。ま、使えると言っても上書きだから二種類以上の能力は使えないけど―』
そう言うとどこからか赤い命晶を取り出して―飲んだ。
青年の茶色い目が、赤く染まった。
青年はビンをコンコンと指で叩く。
そのとき。
バシッ!
何かがぶつかるような音が響いた。
ミカが青年に殴りかかったのだ。
あの青年、何者…?
ミカの右ストレートを人差し指で止めていたのだ。
「てめ…ぇがっ…サクラ…を…」
ギリギリと拳を押すミカ。青年は全く動じない。余裕そうだ。
ミカ、サクラと一番仲良かったし、相当辛いはず…。なのにどうして正面から立ち向かえるの。ミカは、強いよ…。
『サクラって今朝の子かな? その子のことならそうだよ! いつも切り取った右手は、ホルマリン漬けにしてるんだよ♪』
“いつも”…?
必死なミカとは裏腹に青年は上機嫌だ。
『そーれ♪』
トンッ。青年は人差し指でミカの拳を押す。
バシュン!
ミカは吹き飛び、校舎の壁にぶつかった。身体はめり込み、パラパラとコンクリートの破片が落ちる。
「ミカちゃん!! 」
アヤはミカに駆け寄る。呻いているから、命に別状はないだろう。しかし、全身から流血している。
「ミカに何したの!!」
青年をキッと睨みつけ、私は言った。
こいつ、やばいー
そう直感で感じた。
『何したって、見たまんま吹き飛ばしたんだけど…。ーまあ最も、この能力は彼女のものだよ? 』
は? どういうこと?
私の怪訝な顔を見て青年はため息をついた。
『だから、サクラちゃん? だっけ。あの子も“こっち側”の人間ってことだよ。でも魔族では無いよ! てか魔族の右手取ってどうするん。あっはっはっはっはっ!』
青年は一人でツボっている。
え、待って。サクラが特殊住民だったって本当なの…? でも、私らと普通に過ごしてたし。
『まぁ、彼女は能力を最低限に抑えてたからなあ~。イマイチ…。君たち特殊ジャペンの事、全然知らないみたいだし』
青年は横目でミカに肩を貸すアヤを見た。
『あの子は何らか知ってそうだけど。ふふっ、普遍住民は本当に脆いなあ』
アヤが…? そんなハズない。
『これ、綺麗でしょ』
ポイッとキラキラしたものを投げてきた。私は慌ててキャッチすると手の中の煌めきに目を細めた。
「何これ…宝石?」
まるでエメラルドのような綺麗な結晶が手の中で輝いている。
『〝命晶〟って言うんだ。特殊住民は生まれつき持っている能力を発動させるための魔力がある。命晶はその魔力の結晶さ。そして魔力は心臓と連結している』
命晶―メイショウ。魔力―。私はまるでおとぎ話を聞いている気分になった。
青年は続ける。
『連結しているのは、心臓だけでは無い。―右手も』
手に持つビンの中の右手は木の葉のように水中をゆらりと漂っている。
「―じゃあ、右手を取ったら」
『死ぬね。特殊住民は死んだ時、魔力が結晶化してうなじに命晶が出来る』
青年がサクラの右手を取ったのはサクラの命晶を奪う為、か―。辻褄が合った。そんなことの為に殺されたサクラの事を思うと胸が締め付けられる。
それにうなじにこんな綺麗な結晶ができるのか?全く想像出来ないんだけど。
ミカ達に目をやると、ピロティのベンチでアヤが傷の手当をしている。
アヤと目が合った。「気を付けて」と口パクしてきた。コクリと頷いて話を聞く。
『そして、この命晶を飲み込むとどうなると思う?』
「さあ…」
『その人の能力が使えるようになるんだ。ま、使えると言っても上書きだから二種類以上の能力は使えないけど―』
そう言うとどこからか赤い命晶を取り出して―飲んだ。
青年の茶色い目が、赤く染まった。
