〝イツメン〟でいじられ役の私は、駅へと向かう帰り道で、靴紐が解けて結び直していたら皆に置いていかれた。

「いやマジ皆待っててくれてありがとう~! ミカを除く」

「おい、どういう意味だよ」

「てかさ? 普通友達が待ってって言ったら待たね? 思いやり無さすぎね? ミカなんかすーーーぐ、置いていくし…」

「殴られたいの?」

ミカは右手をグーにして満面の笑み。
すーーーぐ、暴力に走るんだから…。でも、そういうところもミカらしくて好きかな、ふふふ。

「何笑ってんだよ気色悪い!」

ガツン。ゲンコツが勢いよく頭に。

「く、くりーんひっと…」

やっぱり、ミカなんて嫌いだああああああ!!!



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「でさー、サユリが私のシュークリーム食べてたわけ! ありえなく無い!? ほんっと最悪! めっっちゃ楽しみにしてたのに」


サクラが共感を求めて喚いてるけど、私は一人っ子だし…。

ちなみに、サユリとはサクラの妹。よく喧嘩してるけど何だかんだで仲いいと思う。

「ん~。でもシュークリームくらい買えば良くない? そんな貧乏だったっけ。サクラちゃん」

「アヤさん通常運転過ぎて泣ける」

アヤの嫌味っぽい言い方で、私は「さん」付けになってしまう。怖いです。アヤさん。

―そういえばミカ、喋ってないな。
ちらっとミカの方を見るとスマホをいじっている。

「ミカは弟がいたんだっけ」

何となく気を使ってミカに話を振ってみた。

「うん」

………。
しゅ、終了~! 待って私地雷踏んだ?

「ミカの弟は優秀だからね。サユリと違って」

サクラもぶっきらぼうに言う。
すると、アヤは何かを見つけたように立ち止まる。

「あ、シュークリーム屋さんじゃん~。貧乏、金ある? 寄る?」

「人のこと貧乏って言うなー!! あ、もしかしてアヤ奢ってくれんの?」

「ふざけてるの~?」

「スイマセンでした」

アヤさん流石です。空気読める人いて助かった…。

ちらっとミカを見ると、シュークリームの味を選んでいた。
んー、疲れてただけなのかな? とりあえず私はそう思うことにした。

「んんんんんー!! めっちゃうまいよおおお!!! 食べられて良かった! 我、この世にいっぺんの悔いなし!」

「サクラうるせえぞ!」

「ミカも食べてみ? ほら!」

「やだ間接キスじゃん。きもい」

あ、ミカ笑ってる…。
同じことを思ったのか、アヤと目が合った。アヤと私はクスッと笑った。
アヤはその笑顔のままサクラに膝カックンをした。

「ぎゃああ!! シュークリームがぁぁぁー!!」

…もしかして私よりサクラの方がいじられる気質あるのでは。

そう思ったら私の立場が無くなりそうだから、考えるのをやめた。

「また明日ねー!」

私だけ最寄り駅の方面が逆なので、皆より一足先にバイバイをする。

「マリちゃん、また明日ね~。ずっこけて死なないように」

「マリ、明日の数学の予習見せて!!あっ、ヤベ! ノート忘れた~萎える~」

アヤとサクラもいつも通りだ。
ツッコミ所満載だけど、もう電車が来ちゃうので笑顔で応える。

「マリ、さいなら」

…、ミカもいつも通りだった。笑顔の後ろには何があるのか、私には分からない。