雲迷の風船

急な声にビックリして小屋の壁際に隠れる。
あの話し方…声…。――運転手のおじさん!?
壁際からそーっと覗く。

「たァ― 緑の小娘はもう少しで取れたのになァ…水色の小娘はどこ行ったんだか…」

ため息と嘆きを聞いてそれが何のことを話しているのかはすぐに分かった。緑の小娘はアヤで、もう少しで取れたは――右手首だろう。水色の小娘は私のことだろう。あの運転手が小屋に閉じ込めたんじゃないってことは誰が…?運転手は元々私らを狙っていたのか。それとも気分で…?
その時、ちらっとこちらを向いた。素早く顔を引く。ドキッと心臓が大きく鼓動したと同時に、おじさんはニヤッと笑う。鋭く長い犬歯が異常なほど大きい。
気付かれた―!?
鼓動は考えれば考えるほど早く、大きくなっていく。
しかし、こちらに来る様子がない。気付いていないようだ。
…はあ…死ぬかと思った。あの運転手が犯人って決まったわけじゃないけど。あの犬歯―獣族? んそれに私以外にもアヤまで狙われていたなんて…。殺り損ねたみたいだから命は大丈夫みたいだけど…。カネコは?あいつ、もしかしてアヤを裏切って…。
チラッともう一度覗くと、普遍ジャペンでいうスマホのようなもので連絡をとっていた。

「アア!? 半滅だァ? ふざけてんじゃねェぞ!!!! 電気使いだろーが関係ねェ! なんも感じない小僧だったぞ!? 手こずってんじゃねェ! クソ雑魚が!!!」

ヒッ! こっわ…。殺気が見えるよ!
その時、驚きの余り足元の石を蹴ってしまった。石は壁に当たり、コツンと音を鳴らす。
やば…っ!

「そこに誰かいンのか…?」

ザッザッとこちらに向かってくる。氷の剣を両手で持ち、構える。

「っ分かったョ!! 今から加勢すッから死ぬんじャねーゾ!」

進行方向が真逆になった。
あ~~危なかった。電話の相手様々だな~。……。ん? 小僧? 電気使い? それって――。

襲撃犯を撃退した時を思い出す。ビルから落ちた犯人―どうして? それは、カネコの…。
カネコの取り込んだ能力は電気だ。そして私らと同じくらいの容姿。

「カネコ――」

私は夢中で壁際から飛び出て、うっすらと付いている足跡を追った。



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その頃アヤは、車から出て辺りに広がる残虐な景色を見ていた。

「うっわ~…。酷いところ…」

右手首のない死体。年齢層はバラバラで、マリやアヤよりも幼いような子供から高齢者までたくさん転がっている。もちろんうなじの命晶は取られていて、自分らが始めた〝命晶狩り〟と同じなのかと胸が苦しくなる。

「マリちゃん…大丈夫かな」

自分が殺されかけているのだ。無事ではいないだろう。
カネコは大分高能力者だからなんとかなる。―そう思った矢先。

林からカネコのものと見られる雷が落ちて――消えた。