「獣族街だァ? ンなの無理無理。彼処まで行くまでに俺もお前らも死んでしまうョ」

いわゆるタクシー乗り場で色んな人に声をかけている。しかし獣族街と聞くだけで門前払いを食らっている私達であった。
髭をジョリジョリと触りながらおじさんは嫌な顔をする。
獣族のいる町、通称―獣族街までタクシーで行く予定だが、そう上手くもいかない。

「そこを何とかなりませんかね~? おじさま♡」

アヤが必死に頼み込んでいるがおじさんは首を振る。

『やっぱり厳しいですかね~…。魔獣の森の手前まででもいいんですけど!!!!』

カネコは急に土下座。

「ぶっ」

「しっ! マリちゃん堪え時よ!」

ジョリジョリとおでこを擦るカネコ。必死―というよりかは、大分無様である。

「たァ―。しょうがねェなあ。そこまでなら運んでやるョ」

ため息をつきつつ、参ったかのように両手を上げるおじさん。
っしゃ! とガッツポーズをとる私とアヤ。

カネコによると魔獣の森を抜ければ魔獣街に辿り着くらしいが、そこが厄介らしい。
厄介って、どんなんなんだろ…。
私は車に揺られながら、あらゆる想像をしていた。


*****************


ガタン、ガタン。

都会を離れて行くうちに、凹凸のある道が増えていく。景色はビルやお店から、林や畑などの田舎になっている。後ろに私とカネコとアヤが座る。二人は爆睡していて、運転手のおじさんは何一つ言わず運転している。
私もウトウトを心地よくなってきた。

〝「マリ、晩ごはんできたわよー!」〟

〝「マリ! テスト勉強はしてるのか?」〟

思い浮かぶのは、やっぱりママ、パパ…。何も言わず家出てきちゃったけど、心配しているだろうな…。学校もしばらく休校とは聞いたけどいつまでとは聞いてないし。最悪退学になるかもしれない。
…そもそも、また普遍ジャペンに帰る事は出来るのか。既に特殊住民になってるし。この能力を家族に、クラスメイトになんて説明すればいい? 命晶のことを知ったらママ達は何ていうのだろうか。クラスメイトからは軽蔑の目で見られるだろう。万が一、サクラを助けられなかったら―

チラッとカネコを見る。本当にこの人を信用していいのか。私達にサクラを助けるという条件で命晶集めをさせるつもり。命晶を集めて何をするのかまだ聞いていなかった…。そして魔族の神、魔神― サスターナ君とはどういう関係なのか。

カネコに寄りかかるアヤを見る。アヤは毒舌だけど優しい一面もあるし、信用できる。ただ―カネコがアヤを見て「知ってそう」って言った事が気がかり。
最後にミカ。強がり故に無理しちゃう。早く見つけてあげないと―
そういえばあのテレビに映ってたあの子は、本当にミカそっくりだった。でもあんなドレスをミカが着るとは思わない。
ミカとサクラは本当に仲良くて…、私らが口出しする事じゃなかったのかな。でもミカだけじゃ―

あ、眠くなってきた…。ちょっと眠ろうかな…。

―?



運転手のおじさんと、目が合った。