「ね、ねぇアヤ達…」

後ろから恐る恐る声をかける。しかし話が盛り上がっているのか気付いていない。

「アヤっ」

「ん? どした、マリちゃん」

呼んだが、言葉が見つからず沈黙が流れる。

『なになに、じぇーけーとやらの修羅場?? 修羅場なの???』

「「黙れ」」

『はい』

やり取りをしているうちにミカが写っていた画面は切り替わり、違うニュースを報道している。

「あ〜。クソカネコのせいでニュース終わっちゃった」

はあ、とため息をつく。果たして、あの皇帝室の場にいたのはミカなのだろうか。
確信もないけど…聞いてくれるかな、話。

『ミカちゃん探さないとだよネ。どの辺からあたってこうかな♪』

やる気を出すカネコ。さっきの私の発言は聞いていたのだろうか。

「ミカちゃんの能力って珍しいんだよね? 匂い放ってるんじゃない~? カネコの匂い消しもしてないし」

アヤの話に同意の意を示す。
んー、確かに。確信も無いからこの話は後で話せばいいかな。
私はそう自分の中で解決すると、この話を胸の奥にしまった。

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私達は作戦会議ということで、カネコオススメのカフェに入った。見たことの無い飲み物ばかりで混乱する私とアヤをニマニマと見るカネコ。アヤの腹パンがヒットした。

『今日の僕の扱い酷くない?』

「さっきも言ったんだけど~、ミカちゃんの匂い辿れたりしないの? お兄さん」

素晴らしいスルースキルに慣れたようなカネコの顔。

『確かに珍しい能力ではあるけど。特殊ジャペンに来た時どこに飛ばされたかが問題なんだよな…。ここじゃ人が多すぎるし、田舎だったら時間もかかるし』

〝飛ばされた〟という言葉に引っ掛かりを感じた。

「もしかして、サスターナ君が私らを飛ばしたの?」

『そーそー、見たから分かると思うけど…』

ここへ来る前の真っ白な世界を思い出した。前後も左右も、上下さえも分からない世界。

カネコが言うには、獣神サスターナくんは普遍ジャペンと特殊ジャペンを繋ぐ〝番人〟をしているのだとか。
この普遍と特殊のジャペンを行き来する通称〝国渡り〟は特殊ジャペンの最高機関でも知っている人がいない。それは普遍ジャペンでも言えることで、実際私達も国渡りを知らなかった。ただ知っていたのは、ジャペンには特殊と普遍があるってことのみ。国境というものも存在しない。

「ってことは、サスターナ君が扉から好きなように飛ばせるってこと~?」

『そういうこと。さっき聞いておけば良かったなあ』

んー、と考え込むカネコ。ずずーっと水色のジュースを飲み干すアヤが人差し指を立てて言う。

「さっきうちらが国渡りをする時のあの歪みを作ってよ、お兄さん」

『あれもサスターナの能力だから僕じゃどうしようもないんだよネ』

―閃いた!

「サスターナ君に直接会いに行こうよ!」

『え、マジで言ってんの!? マリっぺ、サスターナ君のいる町は、じゅ、じゅ、獣族しかいないんだよ』

「お兄さんうちらより強いのに何でビビってんの」

『獣族はめっちゃ凶暴で、異民族を嫌うし…。まともに話できるのがサスターナだけなのにぃ!』

何があったか知らないが、反応からしてトラウマ級に何かされたのだろう。
行けないとは言わないカネコの様子に私とアヤは目で合図する。

「「ミカを探しに、いくぞっ!」」

手を重ねる私とアヤ。チッという舌打ちを聞いて嫌々重ねるカネコ。

「「『おー!』」」

ミカを探す旅が始まった。