黙り込む二人にさっきとは違う微笑みでカネコは言う。
『僕はそんな風に思わないけどね』
弾かれたように顔を上げる私とアヤ。路地裏を通る独特な匂いが鼻をつく。足元に転がるタバコの吸殻から細い煙が上がっている。
『だって普遍住民が命晶を取り込んだ時、特殊住民以上の力が出るんだ』
そんなこと、どうでもいい。私達はサクラを助ける為、そしてミカが心配なんだよ。
「お兄さん、結局協力して欲しいことって何なの?」
アヤのその問を待っていたかのようにニコッと笑うカネコ。どこからか大きなカプセルのような透明な容器を取り出した。中には色とりどりの宝石―いや、命晶が入っていた。
それが何を意味するかは私は察した。
『〝命晶狩り〟に協力してもらうよー♪』
「命晶…ってさ、能力者を殺すって事だよね?」
唖然―
「お兄さん、さすがにそれはアホすぎ。私らまだ高校生だよ~? 人殺しさせてサクラ助けても罪悪感だけしか残らないよ。サクラだってその事を知って喜ぶとは思わない」
『確かにそうだね。それでも助けたいんでしょ?』
カネコはアヤの顔を覗き込む。唇を噛み締めるアヤに否定の意は見られない。
もうここまで来てしまったのだ。今更戻る事は出来ない。私達の意見はもう決まっている。〝何があってもサクラを助ける〟ことだ。
その時、
バシュッ!
カネコに向かって空気の噴射音が鳴る。
それは矢のような形だった― 炎の矢が射たれたのだ。
「カネコ!?」
カネコの目の前で矢は止まる。まるで見えないシールドのようなものがあるように。
『我らを守り給え…サマザーク』
すると、私とアヤにそれぞれ結界のようなものが現れた。内側からじゃないとその〝壁〟は見えないらしく、お互いにはなにも無いように見える。
「お兄さん狙われてるのにめちゃくちゃ冷静~…。 イケメン」
『ありがとう!!』
「うわ、小声で言ってんのに聞こえてんのかよ~。キモ」
「矛盾してるよアヤさん!! あっカネコありがとう、このシールドみたいなヤツ」
『僕後回しかよ!』
カネコは矢の放たれたところであろう上空を煽る。ビルの屋上間の隙間から顔がひょこっとこちらを覗く。
カネコに習って上を見上げていたアヤと目が合う。
「「あ」」
『みーつけた♪ はっはっはっ!』
カネコは人差し指で襲撃犯を指指す。すると指先から電流が勢い良く放たれていく。
「うぎゃっ」
犯人は短い悲鳴を上げて屋上から落ちていく。ドシャっという音が目の前で鳴る。
う、うわあ…。結構高さあるよ、このビル…。
犯人の腹から血が溢れる。まだ意識はあるようだが、打ちどころが悪ければ完全に死んでいただろう。
「やっ…ぱり…高能力者ァ…じゃねェかよ…」
襲撃犯―40、50代くらいのイカついおじさんだった。金髪に黒いスーツ。いくつも空いたピアス。
今にも死にそうだが、慣れているかのように語る。
「さッきから…めちゃくちゃいい匂いすると…思ったんだよ…。その辺り探ッてた…ら、路地裏にィ…高能力者がァ…三人も集まって…狙われないなんてェ…思ってねェだろうなァ」
そこまで言うと、意識が朦朧としてきたのか、目が虚ろになってきた。
『マリっぺ、トドメ♡』
「…は?」
『さっきの炎の矢を、氷で作ってみて。頭の中で考えて、具体的にネ』
具体的って言われても…。氷の矢、か。鋭くて、細長くて…硬い。
手の中で氷の矢が作成されていく。
『おけおけ、上出来! じゃ、放ってみて!』
私は、襲撃犯の右手首目掛けて矢を放った―
『僕はそんな風に思わないけどね』
弾かれたように顔を上げる私とアヤ。路地裏を通る独特な匂いが鼻をつく。足元に転がるタバコの吸殻から細い煙が上がっている。
『だって普遍住民が命晶を取り込んだ時、特殊住民以上の力が出るんだ』
そんなこと、どうでもいい。私達はサクラを助ける為、そしてミカが心配なんだよ。
「お兄さん、結局協力して欲しいことって何なの?」
アヤのその問を待っていたかのようにニコッと笑うカネコ。どこからか大きなカプセルのような透明な容器を取り出した。中には色とりどりの宝石―いや、命晶が入っていた。
それが何を意味するかは私は察した。
『〝命晶狩り〟に協力してもらうよー♪』
「命晶…ってさ、能力者を殺すって事だよね?」
唖然―
「お兄さん、さすがにそれはアホすぎ。私らまだ高校生だよ~? 人殺しさせてサクラ助けても罪悪感だけしか残らないよ。サクラだってその事を知って喜ぶとは思わない」
『確かにそうだね。それでも助けたいんでしょ?』
カネコはアヤの顔を覗き込む。唇を噛み締めるアヤに否定の意は見られない。
もうここまで来てしまったのだ。今更戻る事は出来ない。私達の意見はもう決まっている。〝何があってもサクラを助ける〟ことだ。
その時、
バシュッ!
カネコに向かって空気の噴射音が鳴る。
それは矢のような形だった― 炎の矢が射たれたのだ。
「カネコ!?」
カネコの目の前で矢は止まる。まるで見えないシールドのようなものがあるように。
『我らを守り給え…サマザーク』
すると、私とアヤにそれぞれ結界のようなものが現れた。内側からじゃないとその〝壁〟は見えないらしく、お互いにはなにも無いように見える。
「お兄さん狙われてるのにめちゃくちゃ冷静~…。 イケメン」
『ありがとう!!』
「うわ、小声で言ってんのに聞こえてんのかよ~。キモ」
「矛盾してるよアヤさん!! あっカネコありがとう、このシールドみたいなヤツ」
『僕後回しかよ!』
カネコは矢の放たれたところであろう上空を煽る。ビルの屋上間の隙間から顔がひょこっとこちらを覗く。
カネコに習って上を見上げていたアヤと目が合う。
「「あ」」
『みーつけた♪ はっはっはっ!』
カネコは人差し指で襲撃犯を指指す。すると指先から電流が勢い良く放たれていく。
「うぎゃっ」
犯人は短い悲鳴を上げて屋上から落ちていく。ドシャっという音が目の前で鳴る。
う、うわあ…。結構高さあるよ、このビル…。
犯人の腹から血が溢れる。まだ意識はあるようだが、打ちどころが悪ければ完全に死んでいただろう。
「やっ…ぱり…高能力者ァ…じゃねェかよ…」
襲撃犯―40、50代くらいのイカついおじさんだった。金髪に黒いスーツ。いくつも空いたピアス。
今にも死にそうだが、慣れているかのように語る。
「さッきから…めちゃくちゃいい匂いすると…思ったんだよ…。その辺り探ッてた…ら、路地裏にィ…高能力者がァ…三人も集まって…狙われないなんてェ…思ってねェだろうなァ」
そこまで言うと、意識が朦朧としてきたのか、目が虚ろになってきた。
『マリっぺ、トドメ♡』
「…は?」
『さっきの炎の矢を、氷で作ってみて。頭の中で考えて、具体的にネ』
具体的って言われても…。氷の矢、か。鋭くて、細長くて…硬い。
手の中で氷の矢が作成されていく。
『おけおけ、上出来! じゃ、放ってみて!』
私は、襲撃犯の右手首目掛けて矢を放った―
