卒業式の日の朝の食事を一緒にとって、
私は亡くなった母親の着物を借りて、
近くの美容院で着物を着せてもらって、
卒業式に出る。

本当は、母だって、隼大がしっかり大人になるまで、
ちゃんと見守ってあげたかったはず。
だから、代わりに私が彼を見守っていくからね。

そう思いながら、卒業式の式典を見つめていた。

麻生先生が、涙声になりながら、
生徒達の名前を呼ぶのを聞いて、
思わず涙が零れそうになる。

思ったよりずっと、
大人びた壇上の弟を見て、
小さかった頃の彼の姿を思い出して、
母と手を繋いで歩いていた、
甘えてばかりだった、隼大を思い出して、
私はずっとハンカチを手放せないでいたのだった。