「相手の子の怪我はどうなんですか?」
そう私が尋ねると、

「さっき病院から電話があって、
大きなけがではないけど、芯の色が刺さった部分に残るから、
痕は残るかもしれないと……」
困惑したように教頭先生が答える。

「……そうですか……」
痕が残らないといいけど、と言いながら、
私は大きくため息をつく。

これからそのお宅に伺って、
お詫びと、治療費のことを話してきます、
と、教頭先生たちに告げると、

治療費は、学校内の事故だから
保険の対象になりますから、
こちらから出すのは不要です、

と教頭先生に言われる。

「じゃあ、これから伺って
一言お詫びを言ってきます」
話が落ち着いたところで、私が言うと、

「あ。でも……」
何か言いかける麻生先生が言おうとした。
私が彼女を見つめると、ふっと、目線をそらした。

それ以上、何も言おうとしない先生を見て、
私は小さくため息をもう一度ついて、

とりあえず、隼大といったん自宅に帰って、
菓子折りだけ用意して、
その子のお宅に伺うことにする。

隼大はそのころには随分落ち着いていて、
俺も謝りに行く、とそう言うから、
一緒に出かける用意をした。

さっき、何か言いたげだった、
麻生先生の表情が気になりながら……。