【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

そんな毎日を送っているうちに、
夏休みが終わり、徐々に日差しが弱まってきて、
9月終わりには、恒例の小学校の運動会が予定されている。

小学校の運動会と言えば、
地元では結構盛り上がる行事の一つで、
私も隼大を応援するために、
仕事は前もってお休みをもらっていた。

隼大はもともと運動は得意だから、
安心して応援していられる。

お昼時になると、
「頼んでたけど、お弁当、多めに作ってくれた?」
徒競走で一位を取って機嫌よさそうな隼大が
そう尋ねてくるから、

「うん、作ってきたけどどうして?」
そう言いながら、ふと視線の先に、
宮坂先生を見つける。

隼大の友達の剛君と、宮坂先生がいるところに、
麻生先生が近づいてきている。
隼大がそっちに向かって走っていくから、

「どこ行くの?」
そう言いながら私もその集団に近づいていく。

一瞬目の端で私の姿をとらえた麻生先生が、
嫣然とした笑みを浮かべて、

「よかったらお弁当一緒に召しあがりませんか?
先生の分も作ってきたんですよ?」
そう宮坂先生を誘っている。
思わず顔をしかめてしまいそうになるのを抑えて、
でも、なんて言っていいのかわからなくて、
私が口ごもっていると、
宮坂先生が、豪快に笑って答えた。

「いや、実は俺も多めに弁当を作ってんだよな」
そう言って剛君の頭をポンポンと叩く。
「剛、俺の弁当の味見に付き合えよ」
そう言うと、剛君がびっくりした顔をする。

「センセ、ずりぃ、俺も剛を誘いに来たのに……」
そう隼大が言うから、
「ああ、お弁当多めって……」
隼大が言った意味を私はようやく理解した。