そうして、私と彼の間で、
何度かメールのやり取りをして、
私のおやすみの日に、
一緒に食事に出かける約束をした。

「どうせ食べるなら、うまいものがいい」
そう彼が言って、
島の中では、一番良いホテルのレストランに
行くことになる。

「まあ、その方がややこしくないだろう?」
意味ありげに言って彼は笑う。

確かに地元の店だと、どこも知り合いが多い。
でも観光客が利用することの多いホテルのレストランなら、
比較的知り合いには逢いにくいし、
しかも、ホテル関係者は仕事柄、口も堅い人が多い。

そんなことまで気遣ってもらうと、
なんだか少しだけ意識してしまう。


夏休みを終えて、
東京に戻ってしまった千尋に電話をすると、

「そりゃ、デートだよね?
……よっしゃ、頑張れ!」
そんな風に応援されて、
私は自分の気持ちに完全に整理がつかないまま、
普段より少しだけかしこまった格好をして、彼との食事に出かける。

今回ごちそうしてもらえるのは、
フランス料理のお店ということになっているから、
そんなものを食べたことのない私は、
注文の仕方もよくわからない。
先生はそんなお店でも平気なんだろうか?

待ち合わせ場所で
普段とは違う少しだけシックなワンピースを着た私を見て、
「馬子にも衣装だな……」
そう言って先生は私をからかう。

「……まあ、本当は褒めてんだぞ?」
そう後からぼそりというから、つい笑ってしまった。