「……わかりました、覚悟しててください」
赤くなりそうな顔を下を向いて誤魔化して、
言葉だけは強気なセリフを言う。

その後、夕方になって本当に気にしているのか、
彼から珍しくメールが届く。

『本当に遠慮するなよ?』
そのメールに、私は千尋の言葉を思い出す。

『やれるところまで頑張ってみたら?』

その言葉を思い出して、
ドキドキする心臓を少しだけ抑えて、
メールを打ってみる。

『それなら、何か美味しいものでもご馳走してください』

絵文字も、何もないシンプルなメールだけど、
それでも、何度も何度も見直して、
それから、エイッと、気合を入れて送信ボタンを押す。

しばらくして、携帯が震えるから、
仕事中なのに、そっとそれを確認してしまう。

『ああ、なんでもおごってやる(笑)』
そのメールを見て、思わず笑みが浮かんでしまった。

彼にとって、私は単なる知り合いかもしれない。
彼には忘れられない恋人がいるのかもしれない。

それでも。
今傍に居られて、例えお礼だとしても、
一緒に出掛けることができるなら……。

私にも、少しぐらいはチャンスがあるかもしれない……。