「ええ、そうです」
私がそう答えると、彼はにやりと笑った。
「じゃあ、半年の間は、俺が隼大と一緒に暮らす。
──アイツの面倒は俺が見る」
思わずその言葉に私は意味が分からなくて、
首をかしげて彼の顔を見上げてしまう。
「俺が、佳代さんが卒業するまで、
隼大の面倒を見る、とそう言ってんだよ。
母親が亡くなったばかりで、不安定なのに、
さらに別の土地に行くんじゃストレス半端ないだろう?」
そう言って、小さく笑う。
「それに看護学校ってのは、忙しいんだろう?
一緒に住んでいても、面倒も見れないんじゃないか?」
そう尋ねてくるから、
それはもっとものことなので、思わず頷いてしまう。
「とりあえず、こっちで半年面倒見る人間がいれば、
貴女は看護学校が卒業できる。
卒業さえすれば、こっちに戻ってきて、
島の病院勤務もできるだろう?」
そう言いながら、相好を崩して笑う。
その瞳が最初逢った時よりずっと柔らかくて、
親しみやすい表情に思えた。
「で。でも……」
流石に申し訳ないし、本当にそんなこと可能なのか、
と私が思って聞き返すと、
彼はその大きな無骨な掌を伸ばして、
くしゃりと、私の頭を撫ぜるようにかき回した。
急によく知らない男性に触れられて、
大きく目を見開いて、
思わずびっくりしてぴくんと震えてしまう。
「ああ、わりぃ。なんか教え子感覚だった……」
慌てて手を引っ込めると、彼はそう言って苦笑して、
「まあ、困ったときには、周りの大人を頼ればいいさ」
表情を崩して、大きく破顔する。
その笑顔が、太陽みたいに温かくて、私は思わず見とれてしまった。
「まあ、まずは、隼大と相談してみろ。
今はあいつもよくわからないだろうけど、
自分のせいで、姉が夢をあきらめたと後から知れば、
きっと悔いることになる。
それに、亡くなったお母さんのためにも、
お前がちゃんと、独り立ちできるようになるのが大事だからな」
そう言って、来たとき同様、
そのままあっさりと扉を閉めて出て行ってしまう。
私は、あっという間に、
『貴女』から『お前』になってしまった二人称に気づくこともなく、
呆然としたまま、その場に立ち尽くしていた。
私がそう答えると、彼はにやりと笑った。
「じゃあ、半年の間は、俺が隼大と一緒に暮らす。
──アイツの面倒は俺が見る」
思わずその言葉に私は意味が分からなくて、
首をかしげて彼の顔を見上げてしまう。
「俺が、佳代さんが卒業するまで、
隼大の面倒を見る、とそう言ってんだよ。
母親が亡くなったばかりで、不安定なのに、
さらに別の土地に行くんじゃストレス半端ないだろう?」
そう言って、小さく笑う。
「それに看護学校ってのは、忙しいんだろう?
一緒に住んでいても、面倒も見れないんじゃないか?」
そう尋ねてくるから、
それはもっとものことなので、思わず頷いてしまう。
「とりあえず、こっちで半年面倒見る人間がいれば、
貴女は看護学校が卒業できる。
卒業さえすれば、こっちに戻ってきて、
島の病院勤務もできるだろう?」
そう言いながら、相好を崩して笑う。
その瞳が最初逢った時よりずっと柔らかくて、
親しみやすい表情に思えた。
「で。でも……」
流石に申し訳ないし、本当にそんなこと可能なのか、
と私が思って聞き返すと、
彼はその大きな無骨な掌を伸ばして、
くしゃりと、私の頭を撫ぜるようにかき回した。
急によく知らない男性に触れられて、
大きく目を見開いて、
思わずびっくりしてぴくんと震えてしまう。
「ああ、わりぃ。なんか教え子感覚だった……」
慌てて手を引っ込めると、彼はそう言って苦笑して、
「まあ、困ったときには、周りの大人を頼ればいいさ」
表情を崩して、大きく破顔する。
その笑顔が、太陽みたいに温かくて、私は思わず見とれてしまった。
「まあ、まずは、隼大と相談してみろ。
今はあいつもよくわからないだろうけど、
自分のせいで、姉が夢をあきらめたと後から知れば、
きっと悔いることになる。
それに、亡くなったお母さんのためにも、
お前がちゃんと、独り立ちできるようになるのが大事だからな」
そう言って、来たとき同様、
そのままあっさりと扉を閉めて出て行ってしまう。
私は、あっという間に、
『貴女』から『お前』になってしまった二人称に気づくこともなく、
呆然としたまま、その場に立ち尽くしていた。
