【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

病気で寝ている人なんて、
もう見飽きるほど見てて、何とも思うはずないのに、
目の前で無防備に寝ている彼は、
なんだか、私の気持ちを乱してしまう。

震える指先で、濡れたタオルを持って、
そっと、彼の額に指先を伸ばす。
汗をかいている額をぬぐって、
そっと、首筋の汗もタオルを軽く押し付ける。
何をされても、彼は気づく気配もなくて、

少しずつ大胆になってきた私は
ふと、タオルを横に置いて、
彼の傷に指先で触れてみた。

傷のつるりとした感触に、
一体彼は何があって、こんな傷を負ったのだろうと思う。
普段とは違う、発熱の熱を秘めた彼に触れて、
私は何故か、そっと切なげなため息をつく。

早く元気になって、
いつもみたいに、からかわれたい、とか、
変なことを思ってしまって、あわてて顔を左右に振った。

気づけば彼はすっかり寝込んでしまっていて、

私はふと、このまま私が出て行ったら、
誰もこの部屋のカギを掛けられないことに気づいて、
思わず動きを止めてしまう。

ふっと小さく笑って、ため息をつく。

「仕方ないな、目を覚ますまで付き合うしかないのか……」
そう言って、私は彼の横に座りなおした。