【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

笑っているけど、
いつもよりずっと気の入らない声で言われるから、
私は不安になってしまう。

「わかった、用意させる。
ちょっと待ってて……」
そう言って電話を切ってから、
隼大が家を出ていないことを思い出した。

とはいえ、この暑さで、
飲まず食わずで発熱していたら、
体力も落ちているだろうし、
確かに熱中症をおこしてしまいかねない。

「もう、世話のかかる」
私は立ち上がって、
汗まみれで出かけるのが嫌で、シャワーを浴びて、
綿のワンピースを着て、そのまま家を出た。

外は太陽の熱で、気温がどんどん上昇していて、
せっかくシャワーを浴びたのに、
スーパーに行くまでにまた汗をかいてしまう。

日傘の下でそっと汗をぬぐいながら
近所のスーパーで、
イオン飲料や、ミネラルウォーター、
お弁当やゼリー系の補助食品などを買って、
そのまま、彼の家に向かった。

一瞬、一人で男性の部屋を訪ねることに
躊躇してしまうけれど、
それでも中で倒れている彼のことを考えると、
そんなことでためらう自分の方がおかしく思えてきて、
一つ呼吸をすると、彼の部屋の呼び鈴を鳴らす。

「さっき鍵は開けたから入ってこい」

そう奥から小さく声が聞こえるから、
躊躇いながらも、扉を開けて、

「あの、佳代です……」
そう言ってサンダルを脱いで、部屋に入っていく。