【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

そうこうしているうちに、夏休みに入って、
病院もお盆に入り、すこしだけ忙しさも落ち着く。

隼大は友達と朝から晩まで出かけてしまっていて、
私は家で一人で暑い気温にうんざりしながら、
それでも一人でエアコンをつける気になれなくて、
扇風機をまわして、ぼおっと外を眺めていた。

蝉の声が煩い。
空が青くて、太陽が明るくて、
暑いけど、たまに心地の良い風が流れてきて、
暑くても、夏はいいなあなんて思いながら、
冷たい麦茶を飲んでいたら、
急に携帯電話が鳴った。

慌てて携帯電話を確認すると、
珍しい人から着信が入っていて、

「……先生?」
思わず電話を取ってそう声を掛けると、

「……佳代、今日休みか?」
そう言う声はいつもと全然違って、
掠れていて、精彩を欠いている。

「……どうしたんですか?」
思わず尋ねると、
「……わりぃ、夏風邪ひいたらしい……」
そう言って、電話の向こうで、
はぁっと苦しげに息を継ぐ。

「風邪なんざ引くのは、何年振りだろうなあ……」
そう電話の向こう側で自嘲気味に呟いて、

「悪いんだが、隼大に頼んで、
なんか、適当な食べ物とか、飲み物、
買ってきてもらえねぇかと思って」

このまんまだと、熱中症になりかねねぇよ、
とそう言って笑う。