【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

そんな時、ふと訪れてきたのが、
例の隼大の担任の教師だった、彼だった。


「お邪魔します」
「ああ、先生、よかったら中へ」
玄関先に立つ先生に声を掛けても、私一人だからだろうか、
遠慮して中には入ろうとしない。

ただ、玄関先で、一言。
「色々『穂のか』のマスターに聞いた」
と言った。

『穂のか』は高校時代、私がアルバイトをしていた飲食店だ。
オーナーがめちゃくちゃいい人で、
母も常連だったから、家族ぐるみで親しくしている。
そのマスターが何を言ったのだろう？

「お姉さんは、今東京の看護学校の三年生なんだろう？」
その言葉に私は小さく頷いた。

「でも、隼大の面倒を見る人がいないから、
学校をやめて、島に戻ってくる事も考えていると……」
「はい……確かにそうです」
私がそう答えると、この担任の宮坂という人は、
いきなりこんなことを言い出したのだ。

「なら、あと半年すれば、学校を卒業して、
看護師として仕事ができるようになるわけだよな？」
気づけば口調はどんどん、荒っぽい感じのものになっている。
多分こっちが普段の口調なんだろうなと思って、
私はそのまま彼の言葉を聞いていた。