「ご両親を亡くされて、
弟さんの面倒を見られて大変ですね」

客間に座ってもらうと、隼大の話ではなくて、
そんな私の話ばかりするから、

「あの、隼大、どうですか?」
そうこちらから尋ねると、

「まあ、荒っぽいというか……でも男の子ですから」
そう言って言葉を濁す。
その言葉だけで、あんまりいい印象を持ってないことに気づくけど、

「連絡帳のご指摘が減ってきたので、
少し落ち着いたのではないかなと思ったんですが……」
気になっていたことを尋ねると、

「ああ、それは。
宮坂先生からいろいろ伺いまして」
そう言って、なぜかこちらを向いて、満面の笑みを浮かべる。

「隼大くん、去年宮坂先生のところで面倒を見てもらっていたとか」
「ええ、昨年夏に母が急死しまして、
私はまだ島外で、専門学校が残っていたので、
宮坂先生が隼大をあずかってくれると言ってくださったんです……」
そう答えると、くすくすと笑って、

「隼大君の件も、わざわざ私に
相談してくださったんですよ……」
「母親を亡くしてまだ不安定な部分もあるだろうけど、
イイ奴だから、よろしくお願いしますって……」
お願いされちゃった。と言葉を続けるしゃべり方が、
妙に甘ったるい言い方で、
何だかあまりイメージがよくなくて……。
でも、一応担任の先生だからと、一通り話を聞いていたけど、

結局担任は、隼大のことはほとんど話さず、
私のことを詮索するようなこととか、宮坂先生のことばかり話していった。

私は何だか、胸の中に嫌な感覚で埋め尽くされる。
何だか感じの悪い先生だったな。
島の先生にしては、華やかで綺麗だけど、
何か、先生としてはあんまり信用が置けないというか、
妙に薄っぺらいというか……。

二言目には、宮坂先生、宮坂先生、ばかりだし。
私のことは、なんか粗を探すように、
家から何から、こと細かくチェックするような見方をしていくし、

……肝心の隼大のことは何も見てないし。

まあ、何かあったら、宮坂先生に相談しよう、
そう思って私は携帯電話を握りしめた。