そんなある日。

「──どうして、友達にそんな言い方をするの」
思わずそう、カツカツと言ってしまうと、
隼大は、ぐっと押し黙ってしまった。

「……ねえ、隼大はなんで、
そんなキツイ言い方しか、友達に対してできないの?」
私が尋ねても、もう、隼大は一言も答えてくれなくなってしまった。

連絡帳に書かれていたのは、
些細な友達との口げんかの事だった。
穏やかに注意したらよかっただけなのに、
気づけば声はどんどん高くなってしまう。

「……お母さんがいたら、
俺が何を思っているのかを一番に聞いてくれたのに……」
ヒステリックな私の声に、ぼそりと答えた隼大の言葉が、
私が母親としては不十分だと、はっきり言われたように思えた。

私が母親じゃないのは当然のことなのに、
仕事場でも、半人前扱いをされて、
色々なストレスがたまっていたのかもしれない、

「そんなこと言ったって、
お母さんは死んじゃったんだから、しょうがないでしょ!!」
思わずそう怒鳴ってしまうと。

隼大が、顔に力を入れて、ぎゅっとゆがんだ顔をして、
次の瞬間、椅子を蹴るように立ち上がる。

「隼大!!」
私が声を掛けると同時に、
隼大が、自分の部屋に飛び込む。
そのまま、財布を握りしめて、外に飛び出していく。

「隼大、どこに行くの!!!」
私が慌てて、彼の後を追って外に出ると、
隼大は自転車に乗って、あっという間に飛び出してしまっていた。

「隼大!!!」

後を追って走っても、自転車にはかなわなくて、
私は途中で足を止めてしまっていた。