彼と目があった瞬間、
私は思わずその人に視線を奪われた。

年齢は多分私より幾つかは上。
長身にがっしりとした体格。
キツイ瞳に、頬に目立つ、まだ新しい傷跡。
多分、この島の人間ではない。
どことなく雰囲気が、違うから。

この人は誰だろう、という私の視線に気づいたのか、
ふっと、表情を緩めてその男が頭を下げる。

「このたびはご愁傷様でした。
俺は、隼大(はやた)君の担任で、宮坂と言います」
そう言って、キツイ瞳を細めて、
こちらをじっと見つめる。
よく通る、低い深い印象的な声で、
思わず良い声だな、なんて
見当違いのことを思ってしまった。

そんな自分に気づいて、私はあわてて頭を下げる。
普段は結んでいるのに、
慌てていたせいで、結んでなかった髪が、
さらさらと音を立てて、下げた頭に合わせて、
前に堕ちて、私の表情を隠していく。

「佳代ちゃん、葬儀屋さんが来たよ」
母の友人でもあった看護師が病室に顔を出して声を掛けてくれた。

私は、母親の葬儀の準備をしなければいけないことになって、
慌てて、周りの人に隼大を預けて、
葬儀社の人と、葬儀の相談をすることになった。