そんな私を見て、彼が一瞬暗い表情をした。

……私の悩みの元凶は拓海なのにっ
と一瞬文句を言いたくなるけど、
それもさすがにみっともないから、

「うーん。……どうしようか悩んでる……
皆で遊びに行く感じでもいいよ、って言ってくれているから、
そのくらいなら……」
思わずそう呟くと、
「……行きたくないのか?」
そう即座に尋ねられるから、
「うーん、また中途半端なことになっちゃったら申し訳ないし……」
そう言うと、ふっと彼が小さく笑った。

そんな拓海をちらりと横目で見て、
にっこり笑って南君が私に言う。

「真面目だなあ、佳代ちゃん。
いいじゃん、ノリだよ、ノリ。
一度二人で出かけてきたらいいよ。
そのあと付き合うかどうか、判断したらいいだけだし」

「そうそう、意外と逢ってみたら、
いいって思うかもしれないし、
だめでも、また新しい出会いのきっかけになるかもしれないし」

「相手の人だって、逢ってもくれなくて、
いきなり拒否されたら、ショック受けるって」

ねっ? っと言って顔を覗き込まれて
そんな風に言われると、答えに困ってしまう。

「……そう、なのかな……」
正直、今、他の誰かを好きになれる気はしないけど、
確かにちゃんと向き合わないで拒否されたら、
流石に相手に失礼なのかな……

そんな風に思いかけた時、
南君は、他のお客さんに呼ばれてそっちに行ってしまうから、

「…………」
思わず二人きりになって、
話の穂が途切れた。

拓海はすでに食事を終えて、煙草を吸っている。
ふっと、時計が目に入ると、
そろそろ隼大が最近行きはじめた塾から
帰ってくる時間で……。

「そろそろ、帰るね、私……」
そう言って、席を立つ。