【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

「──!」

私は目を見開いたまま、呼吸が止まりそうになる。
心臓が高く鳴り響いて、
激しい鼓動に壊れてしまいそうだった。

今自分がどうなっているかもわからないくらい、
眩暈と、呼吸の乱れと、心臓が痛くて、

……でもたまらなく、嬉しくて。
彼の震える閉じられた瞼を一瞬見つめて、

そっと瞳を閉じた。

「……お前は、っんとに馬鹿だ……」

ふと唇を離し、私の瞳を覗き込んで囁くその言葉すら、
私には蕩けるように甘く聞こえる。

「……拓海」
私の呼びかけた声に、彼はふっと小さく笑って、
今度は先ほどより、優しく、
だけど呼吸が止まるほど深く、口づけられる。

暖かいというより、もっと熱っぽい唇が、
私の唇を覆い、切なげな吐息交じりに
何度も角度を変えて、口づけを重ねていく。

彼にキスされているという事実が、
私の胸に堕ちるころには、
喜びと嬉しさで、とろとろと、
身も心も蕩けるようになってしまって

私の体を強く抱き寄せる強くて大きな手のひらに、
……大好きな人の腕の中で、ゾクリとするほどの
陶酔感を感じてしまう。

舌を絡ませるような大人のキスに、
着いていくのが精いっぱいの私は、

全身が発火して火にくべたチョコレートみたいに
今にも、トロトロに溶けてしまいそうだった。

かくんと、膝の力が抜けて、
更に拓海に引き寄せられて、
思わず長いキスの間に、甘く艶めいた吐息を漏らしてしまう。
拓海はそんな私からそっと唇を離すと、

「……一番愚かなのは俺だ……」
苦く呟いて、泣きたくなるほど優しく、
私の額にキスを落す。
それから、ゆっくりとその身を離して、
そっと私を優しく押しやる。

「……これ以上傍に居られたら、
責任も取れねぇのに、もっともっと、
お前のすべてが、欲しくてたまらなくなる」

『欲しい』という言葉に、ドキンと心臓が甘く打つ。
けど、彼の声は酷く苦しそうで……。

はぁっと彼が深い息を吐いて、
私から距離を取る。

「今日は悪いが、このまま帰ってくれないか?」
そう言って、玄関の扉を開く。
苦しげな瞳が私を見つめている。

「……悪いのは、全部俺だ。
お前が悪いわけじゃ……ねぇからな……」
そう言って、私を送り出す。

私は、一瞬の高揚感が去って、
苦しそうで切ない彼の声に、
たまらなく不安な気持ちで彼の家を出た……。