【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

「……おい?」
「おじゃましま~す」
そう言って、私は勝手に上り込んでしまう。
なんか、こないだの件以来、私って図々しくなったな。
思わず笑ってしまいそうになる。

でも、ああいうくらいなんだから、
きっと嫌なら、外に出ていけっていうよね?
そんな風に思っている。

「お前な、そんな無防備に男の部屋に来たら、
襲われてもしらねぇぞ?」
そう彼が言うのに、

「……襲ってみます?」
くすりと笑って、そのままテーブルの上に
持ってきた料理を並べる。

「……たく、一度本気で、襲ってやろうか?」
冗談交じりに、言いながら、
私の目を一瞬剣呑な顔をして、見つめる。

冗談交じりのはずなのに、
どこか冗談だけでないような響きを持つ言葉に、
私はドキリと心臓が高鳴る。

(本当に、私を欲しがってくれたらいいのに……)
だから彼には惑わされてしまうんだ。
ドキリとするのに、一方では切なくて。

次の瞬間、彼のお腹から、ぐぅっと音が聞こえて。
私はそのギャップに思わずくすっと笑ってしまう。

「まあ、とりあえず食べてから考えてもいいんじゃない?」
そう言うと、脱力したようにテーブルの前に座って、
「まあ、確かにこの飯は旨そうだな……まずは先に飯を食うか」
そう意味ありげに言って、もう一度笑う。

「いただきます」
手を合わせて、箸を手に取る。
一口、煮物に手を付けて、

「……佳代の料理は、本当に美味いな……」
そう言って豪快に破顔する。
その笑顔に一瞬見とれながら、

「どうせ隼大の分も作るから、
しばらく私、ご飯持ってきますよ?」
そう言うと、そりゃ悪い……と彼は遠慮する。

「いいですよ、その代り治ったら、
また高級フレンチでもご馳走になりますから」
そう言って私が笑うと、

「フレンチか……。
『穂のか』で我慢しておけ……」
そういうと、気持ちのいいほど豪快に、
ご飯をかきこみ、満足げにそれを嚥下する。

「……まあ、隼大を預かってもらったおかげで、
今こうやって看護師にもなれたんだから、
ちょっとぐらい恩返しさせてください」
そう私が言うと、彼はふっと笑みを浮かべる。

「……そうか、まあ、確かに助かるは助かるがな……」

そう言ってぽつりと、
「天罰だと思ったんだがなあ……
お天道様は、意外と俺に甘いらしい……」
小さな声でため息交じりに呟く。

私は半分ぐらいしか聞き取れなくて、
でも、彼がちょっと困ったような顔をしているから、
ちゃんと断られてしまう前に、

「じゃあ、そう言うことで明日から持ってきますね。
……その腕が治るまで……」

そう言って強制的に、彼の家に来る理由を作ってしまった。
好きでいたらいい、なんて言われたら、
もう私の気持ちを止めてくれるものは何にもなくなってしまった。


(だから……もう少し、傍に居させて……)

声にならない声を胸に隠して、
私は笑顔で彼と話をしている……。