【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

「あ、ちょっと書類書いてもらってきます」
そう言って、養護の先生が会計に向かうのを見て、

「とっさに二人受け止めたの?」
私がもう一度聞くと、彼は困ったように笑う。
「しかも右手じゃないですか、
授業とか困るんじゃないの?」
そう尋ねると、左手でペンを持つフリをして、
「こっちでも一応書けるんだけどな……」
そう言うから、思わず目を丸くしてしまう。

「両利きなの?」
「ああ、小さい頃からしょっちゅう怪我してたからな
気付いたら、両方とも書けるようになってた」
「……それでも、その手だと、色々不便ですよね?」
そう尋ねると、そうだなあ、と一瞬頷きかけて、

「まあ、何とかなるから気にするな」
そう言って養護の先生が手を振っているのをみて、
私に手を振って、
「じゃあな、学校に戻るわ……」
そう言って私の元から立ち去る。

「そっかあ、右手が不自由じゃ色々面倒だよね……」
そう呟いて、後で帰りがけにでも寄ってみよう、
と、私は思いながら、仕事に戻った。


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帰り道、食事にもきっと困るだろうし、
と思って、普段の買い物の量を増やして、
家に戻って、普段より多めの食事を準備して、
「宮坂先生が怪我したみたいだから、
差し入れしてくるね……」
そう部活で遅くなる隼大にメモを残して、
私は彼の家に向かう。

もしかして『穂のか』で食事を済ませているかな……
そう思って、メールをすると、まだ家にいるという。

『じゃあ、家で待ってて』

とだけメールを入れて、私は彼の部屋へ急ぐ。
一人暮らしの男の人の家に、
こんな風に行ってしまうのは、
本当は軽はずみなのかもしれない。

それでも、怪我をしていると知っていれば、
こうやって世話を焼きたいような
そんな気分になってしまうのも確かで。

彼の部屋の前で呼び鈴を鳴らすと、
しばらくしてドアを開ける音がして、
彼が顔を出す。

「家にいろって、なんだ?」
そう言って彼が首をかしげるから、
私は手に持った、袋を持って、

「手を怪我しているんじゃ、
食事も作れないんでしょ?」
そう言って、一瞬躊躇う彼の横をすり抜けてしまう。