【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

「そうか、そうですよね?
傍に居たければ居てもいいですよね?」
思わずそう言って涙を指先で払う。

「……待ちたいだけ待ってもいいですよね?」
そう、尋ねたい本人に尋ねる。
彼はつんと私の髪を引っ張って、小さく笑う。

「いいんじゃねぇか?
やりたいようにやったら……」

そう拓海が言うなら、そうするよ?
心の中で、小さく呟く。
ふふふ、と小さく笑って、

「ありがとうございました。
はい、じゃあ、そうすることにします」
彼のこと、好きでいてもいい、と思ったら、
それだけで気分が楽になる。

私は本当に現金だ……。
飲みきったコーヒーカップをそっと机に置いて、

「ご馳走様でした。
拓海、明日は仕事だよね。
私も仕事なので、もう帰ります」

そう言って立ち上がるとそのまま玄関まで一気に歩いていく。

「ちょ。ちょっと待てよ……」
慌てたように言って彼が追ってくる。
「送っていくからちょっと待て……」



少しだけ、気持ちが軽くなった帰り道は、
普段と変わらない彼と普段通り、
なんてことない会話を交わす。

手をつなぐわけでもない、
肩を抱かれるわけでもないけど、
ただ、並んで歩くだけで、とくん、とくんと、
心臓が甘く鼓動を打つ。

先ほど不安と後悔で駆け抜けた道は、
穏やかで、愛おしいものに変わる。

彼に送ってもらって、
あっという間に家までたどり着いていた。

「ありがとうございました、おやすみなさい」
そう言う私に向かって彼が手を振る。
それを目の端でとらえて、
何だか少しだけ楽になった気持ちで玄関に入っていく。

パタン、玄関のドアが閉まる。



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「……誰よりも、一番ズルいのは、俺だ……」
ドアの向こう側で彼が、苦くそう呟いた事は、
最後まで私は気づかなかった……。