【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

それでも、私を不安にさせるのは、

私を舐め上げるような視線で見て、
その男が呟いた、

「……今の彼女?」
そう尋ねたそんな、仕様のない言葉で。
今の彼女、と尋ねられるということは、
その男は、『前の彼女』を知っているということで、
個人的な知り合いでないなら、
きっと、男が島まで、拓海を訪ねてきた何かの出来事と、
『前の彼女』は無関係ではない予感がする。

考えれば考えるほど、
脳裏にはあまりよくない考えばかりが浮かんできそうで、
私はそっと、既に寝ている、隼大の部屋を覗いてから、
リビングでコーヒーを入れる。

今日の彼はいつもの彼とは違っていたと思う。
普段はあんな苛々とした姿を
私に見せたりはしなくて、
いつもどこか余裕があるというか、
飄々とした表情を見せていることが多くて、
口調も穏やかな人なのに、
そんな彼を動揺させるような何かが、
そこにはあるのかもしれない……。

そして、私がずっと彼から感じている、
はっきりしない彼との間の距離感が、
今回のことで、悪い方にはっきりしてしまうことが、
何より怖くて……。

大丈夫だよね。
何も変わらないよね?

そう、ぎゅっと自らの身を抱きしめて、
心の中で彼に尋ねる。

気づけば、淹れていたコーヒーが冷たくなっていた。
私はそれにも気づかずに、ずっと不安な気持ちのまま、
夜を過ごしていた……。