穏やかに過ぎるはずの午後は、
街の喧噪を破るような悲鳴が破った。
血塗られた、真っ赤なナイフを持ち、
返り血を全身に浴びたような姿で、
壊れた瞳を持った男。
男が通り過ぎるたび、
悲鳴と共に、惨劇が増えていく。
真っ赤な血だまりが、転々としていて、
数人の人がそこに倒れ込んでいた。
その男がゆっくりと視線を上げたその先に、
結衣がいた。
彼女の手を引いてその場を逃げ出そうとした瞬間、
その地獄絵に魅入られていた彼女が反応して、
その場を逃げ出そう、とためらいがちに背を向ける。
「早く逃げろ」
間に合わない、そう思った俺は、
彼女の背中を強く押して、
その男との距離を少しでも取ろうとする。
「やめて」
背を向けて、男から逃れようとした彼女が、
悲鳴のような声を上げる。
身体を入れて、彼女と男の間の距離を置こうとした瞬間、
一歩早く、男が彼女の背中に指先を伸ばしていた。
赤黒いそれが、彼女の背中を浅く切り裂く。
一瞬背筋を固くして、彼女が姿勢を崩す。
ようやく彼女と男の間に体を入れて、
男に対峙した俺は、
次の瞬間、自らの顔に飛んでくるナイフをとっさに躱す。
ただ、後ろにいる彼女をかばいたくて、
完全によけきれなくて、頬をナイフが切り裂く感覚がする。
このナイフはもう、俺以外の人間を切り裂かせねぇ。
……もう一筋たりともアイツには傷はつけさせねぇ、
頬の傷に触れて、思ったほど傷が深くないことに気づく。
そりゃそうだろう、あれだけの人間を刺したんだ。
人の脂肪でナイフの切れ味も相当落ちているはずだ。
そう思いながら、唇に笑みが浮く。
街の喧噪を破るような悲鳴が破った。
血塗られた、真っ赤なナイフを持ち、
返り血を全身に浴びたような姿で、
壊れた瞳を持った男。
男が通り過ぎるたび、
悲鳴と共に、惨劇が増えていく。
真っ赤な血だまりが、転々としていて、
数人の人がそこに倒れ込んでいた。
その男がゆっくりと視線を上げたその先に、
結衣がいた。
彼女の手を引いてその場を逃げ出そうとした瞬間、
その地獄絵に魅入られていた彼女が反応して、
その場を逃げ出そう、とためらいがちに背を向ける。
「早く逃げろ」
間に合わない、そう思った俺は、
彼女の背中を強く押して、
その男との距離を少しでも取ろうとする。
「やめて」
背を向けて、男から逃れようとした彼女が、
悲鳴のような声を上げる。
身体を入れて、彼女と男の間の距離を置こうとした瞬間、
一歩早く、男が彼女の背中に指先を伸ばしていた。
赤黒いそれが、彼女の背中を浅く切り裂く。
一瞬背筋を固くして、彼女が姿勢を崩す。
ようやく彼女と男の間に体を入れて、
男に対峙した俺は、
次の瞬間、自らの顔に飛んでくるナイフをとっさに躱す。
ただ、後ろにいる彼女をかばいたくて、
完全によけきれなくて、頬をナイフが切り裂く感覚がする。
このナイフはもう、俺以外の人間を切り裂かせねぇ。
……もう一筋たりともアイツには傷はつけさせねぇ、
頬の傷に触れて、思ったほど傷が深くないことに気づく。
そりゃそうだろう、あれだけの人間を刺したんだ。
人の脂肪でナイフの切れ味も相当落ちているはずだ。
そう思いながら、唇に笑みが浮く。
