【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

男にしばらく付き合って、
不機嫌な顔のまま、男の投げかける質問のいくつかに答えた。
「今どうしているのか?」
「あの事件は貴方にとっては、どんな事件だったか」
「それによって貴方の人生にどんな変化があったか」

まあ、そう言うような内容で、
そのやり取りを思い出して、
俺は部屋に戻っても、明かり一つつける気にもなれず、
真っ暗な室内で、煙草を一本咥え、火をつける。

深く、肺に煙を吸い込んで、
長い、息を吐き出す。

あの事件。
それは、俺が結衣と共に巻き込まれた、
通り魔殺人事件のことだ。

あのころを思い出して、俺は苦く笑みを浮かべる。

高校一年の時、初めてクラスが一緒になってから
気になって仕方なかった。
小柄で、鈴のような華やかな声で良く笑い、
いつも穏やかで、優しくて、
そのくせどこか儚げで。

気づけばいつも結衣のことを視線で追っていた。
高校二年生の時に、好きだと告白した。
彼女は全身を染めるように真っ赤になって、
それでも俺の好きだったあの笑顔を浮かべて、小さく頷いた。

それから、ずっと彼女と一緒にいた。
大学を卒業して、希望していた教職に就くことができて、
生活が落ち着いたら、
近いうちにプロポーズをしようと、そんな風に思っていた。


そんな時期に、あの事件に巻き込まれた。
穏やかな昼下がりに、アイツと一緒に街に出掛けていた。
アイツの欲しがっていたアクセサリーを
誕生日祝いに買ってやって、
こっそり、アイツの欲しがりそうな指輪を物色したりしていた。
近いうちに、ちゃんと指輪を買って、プロポーズをするつもりだった。

そんな俺の気持ちに気づいてないだろうアイツは、
いつも通り良く笑い、俺はその微笑みを見ているだけで幸せで、
俺は、その笑顔だけがあれば、
一生、生きていける、そう思っていた。