【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

「じゃあ例の事件の時に一緒だった彼女とは遠距離恋愛?」
そう尋ねてくるから、深々とため息をついて、
「……どうでもいいだろ、そんな話」
そう言うと、彼がニヤリと唇をゆがめる。

「まあ、いいんですけどね。
貴方が話してくれないなら、
例の彼女に直接インタビューすればいい話ですから」

そう言う男の言葉で、脳裏に、結衣の柔らかい笑顔が浮かぶ。
俺の前で、あの事件の後、見せてくれなくなってしまった、
柔らかくて、優しい、ふわりとした空気さえも染め変えるような
温かい、笑顔……。

今のアイツの前にこんな男が現れて、
あれこれ妙なことを聞いて回れば、
絶対アイツの為に良いわけがない。

結局追い詰められる自分自身に、
むかつきながら、頭をガシガシ掻き毟る。

「アイツのところには行くな……」
そう自らの唇から洩れるのは、低い低い苛立ちの声で、

「アイツは事件のPTSDがひどいんだ。
お前みたいな人間が来たら、症状は悪化するばかりだからな」

そう言ってため息とともに、たばこの煙を吐き出す。

「……わかったよ。俺がお前の質問に答えれば、
アイツのところには話を聞きに行かなくてもすむな?」
そう尋ねると、男はニヤリと笑う。
ICレコーダーを出して、

「もちろん、俺の目的は、宮坂先生、
貴方ですからね?」

そう粘っこく言う男の声に、いらっとしつつ、
俺はもう一本煙草を出して、火をつける。

「で、質問てのはなんだ?」
そう俺が尋ねると、
目の前の男が、舌なめずりをしたような気がした……。