リビングに入ると「おかーさーん?」と
探して呼んだ。
ここは暗かったから電気をつけた。
パチッと音がしたけど、それは電気のスイッチの音だと気付いた。
もう一度呼ぶ。
何一つ音がしなかった。
テーブルに近づくと1枚の紙切れが置いてあった。
それをつまんで、見てみる。
丸っこい小さな字で書いてあるそれは、お母さんからの置き手紙だった。
「……忘れてた」
そう一言呟いて、椅子を引いてストンと座った。
気が抜けた。
すごい脱力感。
思わず笑みがこぼれて、テレビの上を見た。
「なんだ、今日休みじゃん」
テレビの上の壁にかかってあるカレンダー。
赤く丸されている部分が今日を示していた。