君じゃなければ




あれからまた数日が経つも、私は小学校にも行かず部屋に引きこもっていた。



部屋から出て郁に会ってしまうのが怖かったのだ。

あんなひどい事を言って郁を傷つけてしまったから。

郁は何も悪くないのに。

郁がいなくなって困るのは私の方。

また一人ぼっちになるのが怖くて、側におきたかった。

母が言った通り、私は郁の邪魔をしていただけなのかもしれない。


トントン…


優しく部屋をノックする音。

このノックの仕方は家政婦さん。

毎日の事だから耳が覚えてしまったのだ。

私はガッチャっと扉を開いた。


『お嬢様、今日は郁坊っちゃまが発たれる日でございます。どうか…最後に…』


もうそんな日になっていたのか。

通りで今日はいつもより騒がしいわけだ。


『郁は?』

『坊っちゃまは今、お父様お母様とお世話になった方への挨拶で出ておられます。』

『そう…。』

『すぐ戻ってこられると思います。どうぞリビングで…』

『いえ、学校に行きます。』

『ええ!?今からですか…』

『そうです。ここ最近ずっと休んでばっかりだったから。』

『でも、飛行機の出発はお昼の2時ですよ。』


そう…だから学校に行くのだ。

このまま郁の顔を見なくて済むように。

郁が飛行機に乗っている時、私は学校。

父と母の顔も見ずに済むのだから丁度いい。

それに私のような邪魔者がいてなんになる。

辛い思いをするだけならいない方がいい。

 

私はランドセルに適当に教科書を詰めると、そそくさと家を出た。