どうしてだろう。
郁を目の前にして
『“そんなに雨…酷かった?”』
後ろめたい気持ちになるのは。
何故か分からないけど、
今日の事は言ってはいけない気がした。
『“迎えに行けば良かったね。
こんな遅くなるとは思ってなかったから”』
心配してくれていたのだろう。
とても申し訳なそうに
郁は私の濡れた髪を優しく撫でた。
その手はとても大きくて、とても冷たい。
『“姉さん……?”』
郁の手はこんなにも冷たかっただろうか。
雨のかわりに
今度は郁の手が私を火照る体温を
冷ましてくれた。
『“姉さん…何か熱くない?”』
『え………?』
火照っていたのは
恥ずかしさや照れからではなく、
ただ本当に
熱を出したのだと気づいた時には
郁の胸の中だった。