かすれて、ガラガラで、
歌と言えないくらい
酷い叫び声。
飾らず、思うがまま出した私の声を
男は好きだと言った。
いつもの私なら
何を言っているんだろうっと
冷ややかな目で見る事が出来るのに
『お、おい…どうした?』
お世辞を言っているようには
見えない男のせいだろう。
顔が真っ赤になるくらい
ばか正直に恥ずかしく、そして
嬉しいと感じてしまっていた。
『な、なんでも…ない!』
こんな事くらいで冷静さを欠くなんて
私はどうかしている。
コンプレックスだった声を
好きだと言われたくらいで………。
でも、1度赤くなってしまった顔を
簡単に元に戻す事が出来なくて
私は掴まれていた腕を
おもいっきり振りほどいた。
『うぉっ…っと。』
少しだけ驚いたような男の声。
でも、その表情までは見る事はなかった。
腕を振りほどいたと同時に
私は逃げるように
男の側から走り去ったのだ。

