歌なんて…音楽なんて……
大嫌いだったはずなのに。
ただ、がむしゃらに
歌というには雑すぎる声を
叫び続けた。
頭の中に流れたメロディーは
何故か、あの失礼な男が歌っていたもの。
同じ雑な音でも
あの男は朝日のように輝いて見えたのに
私の音は沈む夕日のように
もの寂しい気持ちになる。
嫌いなのに、寂しくなるのに
叫び続けたのは
何故なのだろう。
自分でも訳が分からないまま
叫び続けて
まるで誰かに
カサカサ…………
『っ!』
『おっと…悪りい。』
誰かに見つけて欲しいかのように
叫んでいたのかも知れない。

