君じゃなければ




守る。


それは簡単に口に出来るけど、とても難しい。

誰かを守るっていう事は、自分がもってるもの全てをかけなければ成し得ない。

その上、全てをかけも必ず守れるというわけでもない。


私はその事を知っている。


だから、軽々しく“守る”なんて事を口にする彼に激しい嫌悪感を抱いた。



『結構です!』



肩に触れる後藤君の手をおもいっきり払った。


『遠慮しなくていいんだよ。』


遠慮とかそういう事じゃなくて…

どうして分かってくれないのだろう。



『君のそういう控えめな所は良いことでもあり、悪いことでもあるよね。』



私のいいところ?悪いところ?

彼に私の何が分かると言うのだろう。

全部、自分の都合のいいように解釈するくせに。


どうして……




『櫻田さん?』




どうして私は……


“嫌だ!”


という気持ちすら、はっきり言葉に出来ないのだろう。



私はちゃんと話せるのに

声を出す事が出来るのに



自分の気持ちを胸に押さえ込めてばかり。

かわりに涙が溢れだす。


破裂しそうな胸を押さえ……




『ごめんなさい…。』




私は逃げるようにその場を後にした。