君じゃなければ




魅力ある人。



自分で後藤君の魅力を否定したくせに…

いざ、どんな人に魅力を感じるか聞き返されると、何て答えていいのか返答に困った。


私は交遊が多い方ではない。

むしろ、ハッキリ言って少ない。


他人との交流が少ない私が、特定の人物をあげる事も出来ず、また何を言っても説得力の欠片もなかった。



『櫻田さん?』


『えっ!?』


『“えっ!?”じゃないよ。また、ぼけーっとしてたよ。』


『あー、ごめん。』


『まぁ、いきなりこんな事聞いても、ピンとこないよね。』


『………飯田さんは?飯田さんが魅力を感じる人ってどんな人?』



おしゃべり好きで、私なんかよりずっと他の人との交遊が多い飯田さん。

彼女は一体どんな人に魅力を感じるのか興味がわいた。



『え!?私!?』


飯田さんは最初こそ驚いた顔をしていたが、徐々にソワソワしはじめ……



『私はミーハーだから。もちろん顔も重視なんだけど…やっぱり、声…かな。』



彼女の予想外の返答に、私の顔の筋肉はこわばった。


『声……?』


『そう!今めっちゃハマってるバンドグループがいてね!それで…』


嬉しそうに話す彼女とは逆に、私の心は複雑だった。

音楽は嫌い。

音楽の話も好きではない。

それは歌もバンドも例外ではなかった。


それでも……



『特にメインボーカルの声がヤバいんだよぉ!』



嬉しそうに話す飯田さんを止める気にはなれなかった。

自分が音楽を嫌いだからって、他の人にまで強要するつもりもなかった。

それに私も……




『声に魅力を感じるって…飯田さんも変わってるね。』




変わっているのは私の方。

飯田さんが好きになるくらいのバンドグループ。

きっと本当に声だって素敵なのかもしれない。

それなのに私は……


“どんな人に魅力を感じるの?”


っと聞かれ、一瞬頭に浮かんだのは…





酷い音痴でへたくそなギターの腕をもつ…朝日のような彼だった。