声をあげた男子生徒は……
背は高く、黒髪短髪。
目はくっきりしていて、顔立ちも整っている。
身体についた筋肉は努力のあとが見えた。
誰かに聞くまでもなく、彼が四組の後藤君だという事は、見ただけで分かった。
飯田さんが言っていた通りの人。
後藤君は私との距離をつめると……
『大丈夫なわけがない。こんなに赤くなっているのに。』
当たり前のように、顔を押さえていた手を掴むと、もう片方の手で私の顔に手を添えた。
その瞬間……
キャーッツ!!!
悲鳴にも近い、歓声が体育館中に響き渡った。
これがイケメンの力というものなのだろうか。
緑川さん以外の女子生徒も目がハートになっていた。
けれど………
『ッツ!』
私の背筋はゾワゾワっと寒気を感じた。
この人は何を思って、他人に簡単に触れてくるのだろう。
自分は誰からも好かれていると勘違いしているんじゃないだろうか。
無駄にキラキラとしたオーラを放つ後藤君に、私は好感を持てなかった。
それはきっと……
『俺が保健室まで付き添うよ。』
私が屈折して育ってきたから。
両親からも愛されていると実感した事がない。
それなのに……
誰からも愛してもらえる。
それを当たり前に思っているような人は……
『結構です。』
受け入れられるはずがなかった。

