君じゃなければ

キーンコーンカーンコーン……




高らかと授業の始まりを告げるチャイム音。

今までは特に気にする事もなかったが……

今日は少し違う。



『四組ちょっと前の授業が押して遅れてるんだって。』



小さな声で飯田さんが耳打ちする。

自分の事のようにそわそわする飯田さん。

それに……


刺すような視線を送りつける緑川さん。



私は胃がきりきりする思いだった。



もういっそこのまま授業が終わってくれたらいいのに。

大きなため息と共に体育の授業が始まった。



準備体操を済ませ

軽く体育館を走る。


こんな広い体育館に1クラスだと寂しくも感じた。



ウォーミングアップを済ませた頃、


ぞろぞろと四組の生徒が体育館に揃い始めていた。



『あっれー…、おかしいな。後藤君の姿はないや……』


食い入るように飯田さんは四組のクラスを見つめた。

でも、その“後藤君”の姿はなかったらしい。



『私ちょっと四組の子に聞いてくる!』

『え!?いいよ!そこまでしなくて。』

『だって…櫻田さんは気にならない?後藤君がどんな人か。』

『うん。…ごめん、全く期にならない。それより……』



後藤君がどんな人かより…

今は体育の授業中で……




ボンッツ!ーー…



『痛っ!』


背中に当てられたボールはコロコロと床を転がった。




『よそ見してんじゃねーよ。』




私は緑川さんに目を付けられている。

その事を忘れてはいけなかった。