四組の後藤君……?

一体、誰だろう?


名前を聞いても全く顔が思い浮かばなかった。



『後藤君…って誰だっけ?』


『えぇッツ!?四組の後藤君だよ!』


『ご、ごめん。自分のクラス以外…あんまり覚えてなくて。』


『転校生って言っても、四組の後藤君は知ってるッツ!バスケ部のエースで黒髪短髪のイケメンで背が高くて…ほら、体育の授業も合同であってるし!会ったことあるよ!』



えぇ………なんだろう。

ここまで言われても全然、ピンとこない。


『うっそ…、全然分かんない?』


『ごめん…でも、その後藤君がどうしたの?』


『どうしたの?じゃないのよ!』


『は、はぁ。』


『その後藤君が!櫻田さんを!気になってるんだよね~って話してたらしいの!』


私が気になってる……?

顔もピンとこないし、話した事があるかどうかも思い出せないけど…


『そうなんだ。』


『そうなんだ…じゃないっつーの!!』


どうしたのだろう。

飯田さんは急にじだんだを踏み出した。


『それが目を付けられてる原因なんだよ!』


『………。何で?』


その後藤君が私を気になってる事と、緑川さんに目を付けられいる事がどうして結ぶのか…

私には理解出来なかった。



『分かんないかなぁ。じゃあ直球で言えば、緑川さんは四組の後藤君が好きなのよ。』



好き……好き、…好き?


緑川さんは恋してる人だったんだ。



『私は目障りだった…って事かな?』


『そう!そういう事!あ、いや…』


私は恋なんて知らないけど…

好きな人の好きな人は……

自分にとっては受け入れがたい人。


緑川さんも“後藤君の気になってる人”が嫌いなだけで…


私自身を嫌っているわけではないのかも知れない。


そう思うと………



『ちょっと……』


『え…?』


『何ホッとした顔してんのよ。』



自分の存在が否定されたのではないような気がして、どこかホッとしていた。