数年ぶりに帰って来た故郷は、私が知っている町とは変わっていた。


駅を含め交通機関は充実し、学校やお店も増えていた。

高層マンションも増え、この様子からして人口も増えたのだろう。

“住みやすい町”を目指して頑張ったのかな?っと町並みを眺めながら勝手に想像していた。

でも………



この町には、二度と戻って来る事はないだろう。



この町を去る時、幼い私はそう思って疑わなかった。

そう思うほどこの町には辛い思い出ばかりだったから。

それでも私がこの町に戻ってきたのには理由がある。



トントン………

肩を叩かれ、私は後ろを振り返った。



『郁。』



そこには大きくなった郁の姿。

背の高さや顔立ちは父親似、透き通るような肌の綺麗さは母親似。

子どもの頃の可愛らしい印象はなく、すっかり成長した青年の印象を受ける。

郁も、もう中学生になっていた。


月日が経ち、姿形が変わっても、私達が互いを見間違う事はなかった。



『ただいま、郁。』



何故だろう。

久しぶりに会った弟を見て、“ただいま”という言葉が出たのは。

弟も最近になって都会からこの町に戻ってきたばかりなのに。

でも、その言葉が一番しっくりきたのだ。


そして郁も……



“おかえり”



そう言ってくれた。

例え声にならなくても、私にはそう聞こえたのだ。