君じゃなければ






母はただ自分が好きなだけのナルシスト。




その事に気づいてから、俺は何もかもがどうでもよく思えた。


何を言っても変わらない。

母は何も変える気がないのだから。

必死になる方が馬鹿らしい。


だから俺は、ひたすら静かに過ごした。



自分自身の存在を消すように。



その方が子どもの俺にとっては賢い生き方だ。

変に声を上げ、目を付けられれば…殴られる。

子どもの俺にだって容赦はない。


だからひっそりと自宅という名の監獄で暮らすのだ。



今だけ…


今を我慢すれば……


きっと俺も大きくなるだろう。


そして大きくなったら、この家を出よう。


家を出て、一人で暮らすんだ。絶対に。



そう自分に言い聞かせ、その夢だけが俺を支えていた。


そして………


その生活が、何年も何年も続いた。