だってそうでしょう?


私は、碧斗さんの恋人でも何でもないのだから。







だから、

例え私とキスした唇で、碧斗さんが麗奈さんとキスしていようとも、私には関係ない事。



私は家政婦で、碧斗さんは雇い主なのだから。




気にしてはいけないのよ…










『俺に惚れたら即解雇』

初めて会った時に言われた言葉が蘇る。



碧斗さんは、

好きになってはいけない人なのよ…





私は、自分に言い聞かせるように、心の中で唱え続けた。



















もう気にしないようにと、振り払うように首を振ってから、隣を歩く拓哉さんを見遣る。



先程は繋がれていた手は今は離され、拓哉さんの手はポケットの中。

拓哉さんの表情は、何かに怒っているようだった。