「入学おめでと。
君が前に進めたこと、喜ぶ人がきっといる」
彼はそう言って私の頭を撫でると、「またね。」と言って、桜並木の道を行ってしまった。
その後ろ姿を見送りながら、一筋の涙が私の頬を伝う。
ばあちゃんとの約束を果たすことはもう出来ないけど、
私が前に進めば、ばあちゃんは喜んでくれるかな?
ううん。
きっと誰よりも喜んでくれるはず。
だっていつもばあちゃんは、私がウジウジしてたら「シッカリ前を向きなさいっ!」て怒ってたもん。
私バカだなぁ。
今頃になって気付くなんて。
そもそも、ばあちゃんがあの約束を取り付けてきたのだって、
私の背中を押す為じゃないか。
私が、受験勉強に行き詰まってたから…––––
涙を拭って、桜並木の下に目を凝らす。
だけど、もうそこに彼の後ろ姿はなかった。
また…会えるかな。
名前聞いておけばよかった…。
私に一歩を踏み出させてくれた人。
予感がした。
恋の予感。
その予感は言うまでもなく、
すぐに確信に変わるんだけどね。



