ズイッと近付けられた顔に思わず声を上げれば、「酷いなぁ」と言って喉を鳴らして笑うイケメン様。
恥ずかしさで真っ赤になっているであろう私は、
「わ…私っ!帰りますからっ!!」
そう言って校門に背を向ければ、
「何で?」
と道を塞がれてしまう。
眉を潜めて彼を見上げれば、彼の表情はどことなく楽しそう。
「ど…どいてくださいっ」
「ここまで来たんだから、ちゃんと入学式に参加しなきゃ」
彼は、私の手首を掴むと、校舎の方に足を進める。
「あのっ…い、いいんですっ!…私…」
「ダメだよ。入りづらいなら俺と入ってけばいい」
「ちっ、違っ…」
やだ…
ダメッ……
校門を潜った所で、ばあちゃんとの約束を果たせるわけじゃないのに…
これ以上ばあちゃんがいない現実を…突きつけないで…–––––
「い…いいんですってば!!!」
自分でも、驚くほど大きな声が出てハッと我に返る。
校門を跨ぐ直前で、彼は足を止めて私を振り返った。
「私…すみません。あの…これ以上先には…進めないんです…」



